テニスコートをぐるり囲むように出来ている観客席のど真ん中に腰掛けて、部員の練習を見下ろしていた。
俺様の練習?今日は朝練を少し早めに始めたし、部活後に家でのパーティーがあるからな。
体力は温存しておかなきゃならねえ。当然最低メニューはこなしたが。

ああ?じゃあ早く帰れ?
バァーカ。部長の俺様が誰より早く帰ってどうするよ。
俺様が居るってだけで、練習に身が入るだろうが。

しかしただ座っているだけと言うのも中々辛いものがある。
と言うのもここは中々日当たりが良く、プラス今日は気持ち悪いくらい適度に暖かい。
眠気を誘われない方が異常だ、と樺地に言ってやったら。「ウ…ス」と返事が返ってきた。…おい、テメェが寝てどうする。


っつーわけで、まあ不覚にも俺様は時折意識を飛ばしていたわけだ。
その寝たり起きたりを何度も繰り返した後、ふと時間が気になった。
腕時計を見れば良い?部活中に腕時計なんかするかよ。
そういうのは全部、樺地に任せとけばいいんだ。


「おい樺地。今何時だ」



「えっと、5時半くらい。あ、勿論午後の」



おかしい。いつから樺地はこんなに饒舌になった?
いつから「えっと」「あ、勿論」なんて単語を使うようになった?

むしろ、いつからあいつの声はこんなに高くなった?


この時点で自分の背後に居る人物が樺地では無い者で、しかも良く知っている奴だと気付いてはいたが、俺様は体ごと後ろを向かずには居られなかった。

「おい」

「はい?」

何でお前が、と言おうとしてはたと気付く。
コイツはマネージャーでもねぇ(というより争いの元となるからマネージャーはいない)帰宅部のクラスメイトだった(細かく言うなら隣の席だ)が、なんとなく暇そうだったので俺様の後ろに座ってコート内の試合の経過を記録するように命じたのは他ならぬ俺だった気がする。今日は本当は部員A(名前?確か木下だったような)がスコア担当だったんだが、休みらしいからに任せたってわけだ。
横暴だとかなんとでも言えば良い。結局コイツはノーとは言わず、ちゃんとノートにスコアをつけている。テニスが好きだからいいよ、と快く受けてくれたんだぜ?

そして何で樺地はいねえんだ、と疑問に思ったが、そういえば、樺地は怪我をした鳳に付き添って保健室に行ったような気もする。
寝ぼけている自分に照れ隠し半分、チッと小さく舌打ちをして、少し困った顔をしているに顔を向ける。

「何時っつった?」

「えっ5時半位…あ、でも私の時計少し進めてるから…」

そう言って、そいつは左手を僅かに上げて、視線を落とす。その手首にシルバーカラーの質素な時計がちらりと見えた。
少し骨ばった右手でジャージの袖口をずらし、その袖を押さえる右手の小指が僅か上がっているのが妙に女らしいな、と思う。
特に手入れをしているわけでも無いが、それなりに形の良い人差し指の指先が(実際に聞いたことは無いが、そもそも指先や爪に気を使うような性格でも無い)時間を数えるかのように上下に揺れる。
残りの指は、緩やかなカーブを描きつつもしっかりと左手首を押さえていて安定感があり、見ていて何故か安心する。中指の先にペンダコがあるのも、妙にらしいとぼんやり考える。ペンを確り握ってノート取ってるって事だろ?そういうのが…良いんだよ。



・・・変態か、俺様は。



・・・・・・いや、まだ寝ぼけてるだけだ。



「午後5時…26分です。」



顔を上げたそいつのバック、綺麗な夕日が雲と空をオレンジ色に染めていた。



午後5時26分

・・・部活終了まであと30分て所か。



時計を見る



それは相手を異性として意識した瞬間だったり



あれ、キャラの動作じゃなくってヒロインの動作だ(笑)
おかしいな、最初は跡部様がチャッと腕時計見て、ヒロインがドキッとする夢の予定だったのに…。
跡部って言うより、口調が宍戸さんに近い気がするのは何故?(…)
部活がいつ頃終わるか知りません。6時って遅すぎなのかしら。


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